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8 ATコマンドセット概要

本章では、本LoRaWANモジュールで使用可能なATコマンドセットの概要を説明します。これらのコマンドは、デバイスの設定、ネットワーク接続、データ送受信、およびモジュールの状態管理に使用されます。

以下のセクションでは、ATコマンドをカテゴリ別に分類し、各コマンドの基本的な機能を説明します。詳細なパラメータ説明、戻り値については、本データシートの後続の章で説明します。

ファームウェアのバージョンによってサポートされるコマンドや具体的な動作が異なる場合があるため、ご使用の製品のファームウェアバージョンを必ず確認し、最新のドキュメントを参照してください。

8.1 ATコマンド一覧#

コマンドの接頭辞規則
本モジュールで使用されるATコマンドは、その機能や用途に応じて以下の接頭辞規則に従って分類されています。この分類により、コマンドの目的を容易に識別することができます。

  • R(Restrict) 電波法など制限に関する設定
  • C(Configuration) 設定(コンフィグ)に関するもの
  • D(Data) データ送受信操作
  • I(Independent) 独立操作(モジュールリセットなど)

本モジュールのATコマンドは、その機能と用途に基づいて以下の3つのカテゴリに分類されます。

設定コマンド
表 3のコマンドは、デバイスの基本的な動作パラメータや通信設定を構成するために使用されます。主にC(Configuration)接頭辞を持つコマンドが含まれますが、R(Restrict)接頭辞のコマンドも一部含まれます。デバイスIDの設定、ネットワーク参加モードの選択、データレートの設定など、LoRaWAN通信に必要な基本的な設定を行います。

表 3 設定コマンド(第9章)

CommandDescription
AT+CGBRBaud rateの取得/設定
AT+RMAXTXPモジュールの最大送信電力の制限を設定/取得
AT+RCARRSENキャリアセンスの監視時間とレベルを設定/取得
AT+RPAUSETIME送信後の送信休止時間を設定/取得
AT+CTXP送信電力を設定/取得
AT+CDEVEUIDeviceEUIを設定/取得
AT+CJOINMODEネットワーク参加(JOIN)モードを設定/取得
AT+CAPPEUIApplication EUIを設定/取得
AT+CAPPKEYApplication Keyを設定/取得
AT+CDEVADDRDevice Addressを設定/取得
AT+CAPPSKEYApplication Session Keyを設定/取得
AT+CNWKSKEYNetwork Session Keyを設定/取得
AT+CULDLMODEUplinkとDownlinkで使用する周波数を設定/取得
AT+CCLASS動作クラスを設定/取得
AT+DULSTAT現在の状態や動作状況を取得
AT+RREGIONリージョン設定を設定/取得
AT+CAPPPORTアプリケーションポートを設定/取得
AT+CADRAdaptive Data Rate (ADR) 機能を設定
AT+CRXP受信パラメータを設定/取得
AT+CSAVE現在の設定を不揮発性メモリに保存
AT+CJOINDDRJoinプロセス時に使用するデータレート(DR)を設定/取得

通信実行コマンド
表 4のコマンドは、実際のデータ送受信やネットワーク接続操作を実行するために使用されます。主にD(Data)接頭辞を持つコマンドが含まれます。データの送信、受信確認、ネットワークへの参加(Join)操作などが該当します。これらのコマンドは、デバイスがアクティブにLoRaWANネットワークと通信する際に使用されます。

表 4 通信実行コマンド(第10章)

CommandDescription
AT+DJOINネットワークに参加(JOIN)を実行
AT+CCONFIRMメッセージ確認モードを設定/取得
AT+CNBTRIALS確認メッセージの再送回数を設定/取得
AT+DTRXデータ送信を実行
AT+DRX受信したダウンリンクメッセージを確認

その他コマンド
表 5のコマンドは、デバイスの一般的な管理や状態確認に関連するコマンドが含まれます。主にI(Independent)接頭辞を持つコマンドや、他のカテゴリに明確に分類されないユーティリティコマンドが該当します。デバイスのリセット、ファームウェアバージョンの確認、モジュール情報の取得などのコマンドが含まれます。

CommandDescription
AT+CGMRバージョン番号の取得
AT+CGMI製造元の取得
AT+CGMMモジュール名の取得
AT+IREBOOTモジュールを再起動

表 5 その他コマンド(第11章)

8.2 設定概要#

ATコマンドは、モデムや携帯電話などの通信機器を制御するために使用される標準的なコマンド体系です。その構造は以下のような特徴を持っています。ATコマンドの基本構造は次の通りです。

AT+[コマンド名][操作][パラメータ1][,パラメータ2]...[<CR>] 

すべてのATコマンドは「AT」というPrefixから始まります。これは「Attention」の略で、機器にコマンドの開始を知らせる役割を果たします。「AT」の直後に「+」記号が付きます。次に続くのがコマンド名です。これは実行したい操作を指定するもので、例えば「DJOIN」(JOINリクエスト送信)や「DTRX」(LoRaWANパケットの送信)などがあります。コマンドによってはパラメータが必要な場合があります。パラメータが続く場合は、コマンド名の後に「=」記号を付け、その後にパラメータを記述します。複数のパラメータがある場合は、カンマ「,」で区切ります。最後に、すべてのATコマンドはキャリッジリターン(\<CR>)で終了します。これにより、機器にコマンドの入力が完了したことを伝えます。

ATコマンドには4つの主要な操作モードがあります。

1. テストコマンド
テストコマンドでは、コマンドのサポートされているパラメータ範囲を確認できます。テストコマンドの指定方法は次の通り、コマンド名の末尾に「=?」を付与します。

AT+[コマンド名]=? 

2. 読み取りコマンド
読み取りコマンドでは、現在の設定値を読み取ることができます。読み取りコマンドの指定方法は次の通り、コマンド名の末尾に「?」を付与します。

AT+[コマンド名]? 

3. 書き込みコマンド
モジュール内部で保持しているコマンド値などに新しい値を設定する場合、書込コマンドを使用することでその設定値を上書きできます。書き込みコマンドは、コマンド名に続けて、「=」とパラメータを記述します。複数のパラメータを与える場合は、カンマ「,」で区切ります。

AT+[コマンド名]=[パラメータ] 

複数の場合

AT+[コマンド名]= [パラメータ1][,パラメータ2]... 

4. 実行コマンド
LoRaWANモジュールに対して特定の動作を指示する際に使用される簡潔な形式のコマンドです。これらのコマンドは、追加の情報を必要とせずに単独で機能を実行します。
実行コマンドは、次のようにコマンド名のみを記述し、後には何も付与しません。

AT+[コマンド名] 

5. コマンドの応答
ATコマンドの実行結果は、それぞれのコマンドの種類や内容などによって異なりますが、「OK」や「ERROR」、あるいは要求された情報や状態が返されます。コマンドが間違っている場合や、実行できない状態の場合など、エラーメッセージが返されます。

正常応答

OK

要求された情報や状態の応答例

+CGMM=A660-900T22  OK

上記はモジュールのモデル識別情報の応答です。

失敗応答

ERROR

8.3 周波数チャンネルと帯域幅一覧#

本モジュールは、LoRaWANの複数の地域別周波数プランに対応しており、EU868、US915、AS923-1、AS923-2に準拠しています。各周波数プランの概要は以下の通りです:

  • EU868: 欧州で主に使用され、863MHz~870MHzの周波数帯を利用します。
  • US915: 北米で使用され、902MHz~928MHzの周波数帯を利用します。
  • AS923-1: アジア太平洋地域(日本を含む)で使用され、923MHz~925MHzの周波数帯を主に使用します。
  • AS923-2: AS923-1と同様にアジア太平洋地域で使用されますが、周波数が若干異なります。

日本では、AS923-1周波数プランを使用します。以下に、AS923-1の主要な設定を示します:

  1. 周波数チャンネル

アップリンク:
アップリンクチャンネルを表 6に示します。チャンネル0(923.2 MHz)とチャンネル1(923.4 MHz)は、すべてのAS923-1準拠デバイスで実装が必須です。Join用のチャンネルは923.2 MHzと923.4 MHzを使用します。

表 6 AS923-1のアップリンクチャンネル

チャンネル周波数
チャンネル0923.2 MHz
チャンネル1923.4 MHz
チャンネル2923.6 MHz
チャンネル3923.8 MHz
チャンネル4924.0 MHz
チャンネル5924.2 MHz
チャンネル6924.4 MHz
チャンネル7924.6 MHz

ダウンリンク:

  • RX1: 同一周波数(アップリンクと同じ)
  • RX2: 923.2 MHz(デフォルト)

また、各プランで利用可能なデータレートも異なります。例えば、AS923では表 7のようなデータレートが定義されています。

表 7 データレート

データレート設定
DR0SF12 / 125 kHz
DR1SF11 / 125 kHz
DR2SF10 / 125 kHz
DR3SF9 / 125 kHz
DR4SF8 / 125 kHz
DR5SF7 / 125 kHz

実際の使用に当たっては、使用する地域の規制に従って適切な周波数プラン、チャンネル、および設定を選択してください。