14 FAQ
#
14.1 通信可能距離A660-900T22は、最大で20mW(特定小電力、微弱な電波)でありながら、LoRa変調による効果で、見通しがよければ、10km以上離れた地点においても受信可能な場合もあります。ただし、設置環境(高さ・周辺の電波状況・見通し)や電波状況等によって大きく変動します。また、アンテナの種類、設置状態も影響します。
実用的な目安としては、ビル・マンションなどの区画範囲、学校や工場の敷地内、山頂から見渡せる範囲などは、一部の金属構造物の内側などでない場合は、13dBm(20mW)の出力設定で届く場合が多いですが、アンテナの設置場所の工夫は必要とします。アンテナは周囲が開放された見通しの良い場所に設置することが好ましく、屋上やバルコニーなどに設置されることで良い電波到達性能を期待できます。
周囲にコンクリートなどの建造物が多い市街地などでは、数百メートルから1km程度以下になる場合もあり、郊外では3km程度、田園地帯などでは5〜10km程度通信可能な場合もあります。また、山頂や鉄塔に送受信ともにアンテナを設置した場合は、70〜100km近くの距離で通信が可能であった事例もあります。
連続パケット送信、もしくは、間欠でのパケット到達性の安定度は、通常100%(パケット損失0)を前提としてシステムを設計することはできません。本通信モジュールには、国内電波法遵守のための、キャリアセンスによる電波監視で決められた送信遅延や停止、また、混信などの影響を含めた、空間の状況によってパケット到達確率は100%から低下します。
一般的な環境下においては、送受信モジュールの設置場所を固定していても、受信時に観測されるRSSI値は変動します。この変動要素には、周囲のノイズ、送信機や受信機のアンプの増幅レベルの誤差(送信においては最大1dBm程度、平均0.5dBm程度)を含み、電波伝搬経路の僅かな変化によっても影響を受けます。経験による定量的な目安は、-110dBm〜-120dBm程度以上のRSSI値であるとき、比較的パケット損失は低く、RSSI値においても安定します。一方で、-130dBm以下、最小では-145dBm程度くらいになるケースでは、パケット到達率は不安定になりやすい傾向にあります。
本LoRaモジュールの理論的、理想的、一般的な環境での通信距離における評価値は、「奥村–秦カーブ(奥村–秦モデル)」と呼ばれるマイクロ波・移動無線における経験則モデルが有名で、参考値として使用できます。(図 7)
図 7 奥村-泰モデル 920MHz 13dBmの理想アンテナでの受信電力(アンテナ設置高15m)
この受信電力dBm値が、およそ-140dBm付近が本LoRa通信モジュールの受信感度限界といえます。
#
14.2 電波の出力損失の回避電波出力が悪化するパターンをいくつか例示します。これらに該当する場合は、適切な対策を実施することで出力を改善できます。
大地(地面)は電波を吸収・反射するため、地面付近にアンテナを設置することは避け、アンテナを高く上げることを推奨します。また、湖面や海水など、大量の水がある区域で、アンテナを水面に近づけて使用すると出力が大きく減衰します。水面から離しての使用を推奨します。
アンテナの近くに金属製の物体がある場合、もしくは、金属製のシェルの中にアンテナが置かれている場合、信号の減衰は非常に深刻になります。金属に比較的強いアンテナも使用できるようになってきていますが、一般に専用の設計を要するため、個別の測定や検証を要します。
本モジュールに供給される電源の安定性が低い場合、電源の出力インピーダンスが高い場合などは、電源設計を見直してください。本モジュールは、送信時に瞬間的に電流を要します。給電ラインの電圧低下や電圧リプルの発生を抑えるように工夫をしてください。
本モジュールとアンテナの整合度が悪い場合や、アンテナ自体の品質に問題があると、通信に影響します。設置状態でのアンテナインピーダンスやモジュールの取り付け状態などを確認してください。また、アンテナケーブル自体も信号減衰の要因となります。アンテナによって指定されたものや、プリント基板上の配線やコネクタについても信号減衰が少ない実装を行ってください。
#
14.3 モジュールの使用環境モジュールの使用環境における注意点を示します。これらは例示であり、個々の設計者により適切な環境下で使用されることを確認してください。
給電のための電源を確認して、定格電源電圧内にあることを確認してください。 定格電圧を超えると、本モジュールは恒久的に損傷する可能性があります。
設置および使用中は、必ず静電気防止対策を行ってください。本モジュールは金属シールドを施してありますが、高周波コンポーネントは一般に静電気に敏感です。
設置および使用中は、高湿度を避けてください。内部で使用している高精度のオシレータコンポーネントなど湿度に敏感なものを含みます。
特別な要件がない場合は、高温または極低温環境下での連続使用は推奨しません。結露や部分的な過度な高温など、モジュールの動作要件を逸脱する可能性があります。可能な限り、余裕のある動作環境を構築して利用してください。
零下・低温時の動作についても、電波放射が正常に行われることを確認していますが、使用するバッテリーなどは、一般に零下以下の極低温域で安定した出力を得られるものは限定されます。低温使用時において、異常が生じた場合、まず電源ラインの安定性の確認を推奨します。
#
14.4 BER(ビットエラーレート)本モジュールは、電気的な影響によって、ビットエラーが介入、混入する可能性があります。LoRa変調後の無線の送受信においては、LoRaデジタル変調におけるBER訂正・補完機能が働き、ビットエラーの発生確率は極めて低いため、通常の使用においてはそれを考慮する必要はありませんが、本モジュール、および、それが実装されているプリント基板上で発生するノイズやMCUのクロック精度などによってUART信号にエラーが混入することは希に生じます。ビットエラーやデジタルエラー回避のための手順を例示します。
近くに同周波数信号干渉がある場合は、BERが高くなります。干渉源から離れるか、干渉を避けるために周波数とチャネルを変更してください。
電源能力が不十分な場合、伝送データが文字化けする可能性があります。電源の信頼性を確保してください。
信号や電源の延長ケーブルやフィーダーの品質が不十分または長すぎると、ビットエラー率が高くなる可能性があります。
#
14.5 パケット到達のリアルタイム性LoRaWANの通信手順は、ビットレートが低速である以外においては、ほぼリアルタイムに無線伝送は可能です。しかし、Class Aについては受信スロットが制限され、リアルタイム性は大きく制限されます。また。ゲートウェイの負荷、電波使用状況、LoRaWANデバイス数などによって、影響を受けます。
#
14.6 他の920MHz通信機器との電波干渉本モジュールの送出する電波は、他の920MHz無線(FSK通信方式など)と干渉します。ただし、国内では、この帯域に多数のチャンネルが割り当てられており、実用的な範囲と使用方法では、それほど干渉ジャミングによる通信遮断の頻度は大きくはありません。また、正しく無線出力が設計されたWi-Fi(2.4GHz, 5GHz, 6GHzなど)、Bluetooth(2.4GHz)、Zigbee(2.4GHz)、電子レンジなど、他家庭やオフィスで使用される無線機器などとは干渉しません。工場や無線計測機器などで920MHzを使用している場合は、チャンネル選択に配慮すれば干渉を防ぐまたは低減することが可能です。干渉による影響を低減するため、本モジュールには、国内の920MHzキャリアセンスの規定動作が実装されており、相互の電波干渉による影響は低減されます。
#
14.7 モジュール制御ロジックの改良の禁止本モジュールは、モジュール内部に省電力小型コントローラーを搭載することで、国内電波法、ARIB STD-108等の規定・規約に従った振る舞いを保証しています。設計者や使用者によってこれらの書き換え、改造などはできません。また、書き換えて使用された場合は、電波法に抵触する可能性があります。当社が提供する書き換え可能なファームウェア以外の使用におけるサポートは提供されませんのでご注意ください。
#
14.8 技術適合認証・電波法本データシートで説明しているA660-900T22は、工事設計認証(技術適合認証の量産設計認証)を取得しており、本モジュールと認証済みの指定アンテナとともに、そのままの形でモジュール本体の改良をせずに、本データシートに示す公開された手順に従った使用方法を遵守する限りにおいては、改めて技術適合認証や、工事設計認証を設計者が取得する必要はありません。本モジュールの仕様は、将来改変される電波法令に抵触することが無い限りにおいて、設計者、および、使用者は認証や免許を取得せずに日本国領土・領海内(移動体搭載を含む)において使用可能です。
設計者によって、独自に設計した送信用アンテナを使用したい場合や、本モジュールを分解した場合、定格外の電源や使用法を行う場合などについては、改めて技術適合認証をその要件で取得する必要があります。通常は、当社ではそのような行為に関してのサポートは提供しておりません。設計者による特段の理由で対応が必要な場合は、当社サポート窓口までご連絡ください。
#
14.9 日本国外での使用についてA660-900T22の電波法における認証番号と認証内容は、日本国内でのみ有効です。Wi-FiやBluetooth等における2.4GHz, 5GHz帯の国際統一のISM帯(Industrial Scientific and Medical Band)周波数と異なり、サブギガヘルツ帯のISMバンドは国によって異なります。諸外国においては、400MHz、700MHz〜900MHz帯に分布しており周波数帯そのものが異なっています。本モジュールでのRF設計周波数帯は、国際的な900MHz帯のISMバンドの範囲に対応しており、米国、EU諸国などを含みますが、日本国内において、一般の販売チャネルにて提供する本製品の対応は、LoRaWAN AS923-1の本データシート記載の範囲です。