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7 推奨アンテナ

アンテナ(空中線)は通信性能において重要な役割を果たしており、多くの場合、性能の低いアンテナは通信システムに大きな影響を及ぼします。そのため、当社のZigBee®省電力ワイヤレスモジュールを優れた性能とリーズナブルな価格でサポートするために、登録済み推奨アンテナの情報を提供しています。登録済みアンテナは随時更新(追加)されるため、最新情報をご確認ください。

7.1 Z240-MP4 2.4GHz帯高度化小電力データ通信システムの使用可能アンテナ#

工事設計認証または技術基準技適証明を取得した際に指定したアンテナ以外はご使用頂けませんので、当社がご案内する適合したアンテナをお求めください。ただし、受信機および受信専用での利用については高利得の鋭い指向性アンテナなども利用可能です。推奨アンテナのリストは随時更新されるため、別途提供する一覧にてご確認ください。

使用可能なアンテナの規格は、アンテナの特性データによって制限されます。Z240-CP13においては、10dBm/MHz (10mW/MHz)を最大電力として設計しており、国内の認証機関においてその確認が行われています。本2.4GHz帯高度化小電力データ通信システムにおいては、EIRP(Equivalent Isotropic Radiation Power: 等価等方放射電力※)は、12.14dBm/MHzを超えない範囲と定められており、モジュール送信電力とアンテナ利得の積算が、(dBで加算が)12.14dBm/MHzを超えることができませんので、使用するアンテナの利得は2.14dBiを超えないよう法令によって制限されることになります。当社が適合アンテナとして認証登録しているアンテナはこれらの基準を満たしたものです。アンテナは物理的、電気的な構造から、通信機の送信電力に伴う制限があり、10dBm/MHz (10mW/MHz)の極めて小さな電力はいずれのアンテナであっても安全に使用することができますが、性能を確保するためにはその選択と設置方法に注意してください。

※EIRP(Equivalent Isotropic Radiation Power: 等価等方放射電力)とは、アンテナからある方向に放射されるエネルギーを「等方性アンテナ」(理想アンテナ)での送信電力に置き換えたものです。

7.2 アンテナのVSWR値#

通常、本モジュール向けの登録認証アンテナは、2.4GHz帯のVSWRが最小となるように設計されているものですが、この周波数位置が移動することによって、VSWRが大きくなり放射特性が悪化します。開発時などはVNA(ベクトルネットワークアナライザー)を使用することが一般的ですが、アンテナアナライザー、インピーダンスアナライザ−などの測定器を用いて設置状態におけるVSWRの測定を行うことで、容易に確認が可能です。

設置状態において、2.4GHz付近のVSWRが1.0に近いことが望まれます。一般にVSWR 2.0以下程度での使用が好ましく、3.0を超えると送信電力に対して伝送損失が大きくなります。表 13にVSWRおよび反射係数、リターンロス、伝送損失の対応をまとめます。

表 13 VSWRおよび反射係数、リターンロス、伝送損失の対応

VSWR1.01.52.03.010
反射係数00.20.330.50.82
リターンロス(dB)14.09.56.01.7
伝送損失(dB)00.210.511.254.85

7.3 フレネルゾーン#

電波の伝搬の効率性は、電波の伝搬空間におけるフレネルゾーンの確保によって決定されます。フレネルゾーンとは、送信アンテナと受信アンテナの位置関係(高さと距離など)によって決まる楕円空間状の電波伝搬に強い影響を与える空間であり、この空間の遮蔽物(大地や水面などを含む)の存在により電力のロスや反射が生じることで、伝送距離が縮まります。伝送距離は通信方式のリンクバジェットによって決まり、本モジュールは受信感度 -97±1dBmを持ちます。実際の信号到達の可否はS/N比によっても変化するため一概に求めることはできませんが、フレネルゾーンによって送信機が放射した電力が受信機に到達するまでの伝搬経路での損失を見積もることが可能であり、フレネルゾーン域における遮蔽物を減らすことが電波の到達性を向上させます。

フレネルゾーンは、無線周波数と送受信アンテナ間の距離によって決まり、楕円形空間として表されるため、特に、最も広がる中心部分の断面(地面などを想定した場合高さ)が遮蔽されない高さにアンテナを設置することが効果的とされます。通常アンテナ設置の地上高として考えることが一般的で送受信双方の地上高が確保できることが理想的ですが、一方だけであってもその効果は期待できます。アンテナからの放射電力における遮蔽物による電力損失は受信電力の減衰に影響し、本モジュールの受信限界感度を下回ることで受信電力を正しく復元できない状態となり受信に失敗します。フレネルゾーン内の遮蔽断面積が少なくなるようなアンテナの設置方法検討することで、受信感度の確保が可能です。表 14に地表面での2.4GHzにおける通信距離に対するフレネルゾーンをまとめます。

通常の地表面での一般的な利用においては、自由空間における2.4GHz無線周波数の距離減衰に対して地上高や遮蔽物による影響の方が極めて大きいため、フレネルゾーンを確保するようなアンテナ設置を検討することが電波送達性能の向上に寄与できます。

一方で、遮蔽物がほとんど存在しない、空中、もしくは、上空に向けた通信の場合は、開放区間として取り扱うことができるため、通信飛距離は格段に伸ばしやすく、その場合は使用周波数における空間減衰特性も考慮すべきです。

表 14 2.4GHzにおける通信距離に対する大地に対するフレネルゾーン

通信距離(m)125102050100200500
フレネル半径
理想アンテナ高(m)
0.20.30.40.60.81.31.82.54.0
フレネル半径の60%
アンテナ高(m)
0.10.10.20.30.50.81.11.52.4

実際には横方向の開放空間も考慮する必要があります。電波の伝播イメージは、図 10のように送信機と受信機の間の距離が大きくなればなるほど、楕円形であるフレネルゾーンの高さ(幅も)は大きくなります。

図

図 10 電波の伝播イメージとフレネルゾーンの距離と高さ(幅)の関係

このフレネルゾーンとは、電波の行路長差による位相の変化がπ以内になる範囲のことであり、このフレネルゾーンを通過する波は(波面の波のように)互いに強め合って合成される性質があります。図 11に示す通り、送信機と受信機を結ぶ直線上に何も障害物がなくても、この楕円形の範囲内に地面や水面などを含む障害物があると、反射などの影響によって位相変化が発生し、伝送距離に影響を与えます。フレネルゾーンの定義や電波伝搬の原理から、アンテナを高い位置に設置することで、地表面から離し地表の遮蔽物の影響を小さくできます。送受信機の双方のアンテナを高所に設置することは現実的では無い場合が多いですが、片方だけをビルの屋上や高層階の窓際などに設置することで大きく到達距離に差が生じます

図

図 11 フレネルゾーンとアンテナ高の関係

7.4 外部アンテナの設置方法#

アンテナ素子部分がエンベローブ(通常は樹脂製の筒)に覆われた完成外部アンテナは、その外装やコネクタの性質から、耐候性(防水や紫外線耐性など)、非耐候性のものがあります。耐候性のものであっても、コネクタのケースとの接合などによって必ずしも耐候性能がそのアンテナ全体で保証されているとは限りませんが、一般に非耐候性のものと比較すると、耐紫外線効果が高い樹脂や、雨滴の付着などによる特性劣化が小さいものが使用されている傾向があります。

また、外部アンテナは通常ケースの外に露出して使用する設計のため、アンテナの外装樹脂が直接外気にさらされることを想定しています。また、その外装樹脂はコネクタ部の金属端子以外が他の物質に触れない状態で設置することが望ましく、近辺に壁や金属が配置されないことが好ましいといえます。アンテナ付近に金属が存在した場合、アンテナのVSWR(電圧定在波比:アンテナに送信した電力の反射波の率)特性が劣化します。

図 図  

図 12 一般的な2.4GHz対応アンテナ(左:非防水、右:防水・耐候性)

7.5 PCB基板・FPC基板の設置方法#

ケース・筐体に内蔵しやすい形状のアンテナとして、プリント基板(PCB)にパターンされたものや、薄いフレキシブル基板などがあり、多くの場合それらは両面テープなどを用いて筐体内に容易に固定できる形状となっています。これらの形状の基板は機器内蔵アンテナとしてよく利用されますが、その性質や扱いやすさについてはいくつかの点で注意を要します。

一般に多くのPCBやFPCアンテナは、樹脂性のケースにテープなどで固定されることで、設計した特性が得られるように作られています。そのため、取り付けるケースの素材や取り付ける場所、取り付けたアンテナからケース内包物などの近接距離などの影響によって、特性や性能が劣化しやすい状態になりやすいことに注意が必要です。アンテナメーカーがドキュメントを公開している場合はそれに従うことも可能ですが、実際には具体的な設置・取り付け方法に言及されていない場合がほとんどです。これらの種類のアンテナの多くは、厚さ数ミリ程度のABSやポリカーボネイト樹脂板に貼り付けて使用することを想定しており、周囲に金属が無い状態を理想としています。

また一般には、2.4GHz帯通信用アンテナは偏波面が垂直偏波となるように取り付けする方が好ましい場合がほとんどです。実際の特性を確認する場合は、外部アンテナ同様にインピーダンスアナライザなどを用いて、VSWRが2.4GHz近辺で十分に下がっていることを観測してください。VNAを使用する場合は、S11係数やVSWRを表示する機能を使用することも可能です。設置場所を変更することが難しく、2.4GHzに対してのマッチングが悪い場合(ずれた周波数にVSWRの谷がある場合、もしくは、スミスチャートの中心である1.0R±0jから大きくずれている場合)、マッチング回路を追加することで整合させることが可能です。解決方法・内容はアンテナメーカーや高周波回路設計事業者などの協力を得るか、マイクロ波帯の高周波インピーダンス整合に関する専門情報を参照してください。本モジュール向けに登録されているこれらのアンテナの例を図 13に示します。PCBアンテナは硬質のプリント基板用素材で作られたもので、厚さは0.6~1.6mm程度のものが一般的です。FPCアンテナは折り曲げも可能なフィルム素材にアンテナパターンがプリント基板同様に施されています。通常折り曲げて使用することは想定されていないため、曲げて使用すると放射性能に影響を与える可能性があります。

図

図

図 13 一般的な2.4GHz対応PCBアンテナ(上)FPCアンテナ(下)

7.6 アンテナサイズとVSWRの関係#

アンテナのサイズは原則として取り扱う波長や電力によって決まることがほとんどですが、本モジュールの電力は一般的なアンテナサイズ形状に対して十分小さいので、通常は電力を気にする必要はありません。(当社が認証を取得しているアンテナは、ほとんどが1W〜2W以上の設計電力を持ちます)波長に対するアンテナのサイズは、λ/2ダイポールアンテナで(若干の比誘電率による短縮効果はありますが、通常は)6〜8cm程度となります。図 14に実測結果を示しますが、周波数のマッチングするVSWRの谷のカーブは比較的緩やかであり、VSWR最小のポイントを含めたVSWR\<2.0の範囲(実用的に使用できるアンテナの帯域幅)は300MHz程度あります。一方で、アンテナサイズの小型化を図った小型アンテナにおいてはVSWRの谷部分の特性がより尖鋭になり、僅かなずれでマッチングが極端に悪化してVSWRが劣化しやすくなる傾向があります。小型アンテナを使用する場合は、よりこの点に注意を払う必要があります。アンテナ周囲の物質などの影響を受けてこのマッチング周波数がずれてしまい、期待通りの電波放射が実現できなくなります。この比較は、本モジュールの同条件での受信側におけるRSSI値を観測するとすぐにその差に気付くと思います。測定器が無い場合は、簡易的に条件の良いアンテナと相対的に比較することで確認することも可能です。

図

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図 14 アンテナによるVSWR特性の違い(上: λ/2ダイポールアンテナ、下:小型アンテナ)