6 よくある質問(FAQ)
6.1 通信互換性#
本モジュールはZigBee® Alliance(現在はConnectivity Standards Allianceとして知られる)が定める規格に準拠した製品として、様々なZigBee®対応デバイスとの互換性を確保しています。
本モジュールはZigBee®3.0プロトコルを実装しており、以下の互換性を提供します。
- ZigBee®3.0認証デバイスとの互換性
- 下位互換性によるZigBee®2.1およびZigBee® PRO対応デバイスとの基本的な通信機能
- ZigBee®標準プロファイル(Z-Stack3.0.2で実装されているHome Automation、Light Link、Building Automation等のプロファイル)のサポート
また、いくつかの市販メーカーのZigBee®製品との互換性テストを実施し、本モジュールは以下のZigBee®デバイスタイプと正常に通信でき、相互運用性を確認しています。
- コーディネータ
- ルータ
- エンドデバイス(スリープデバイスを含む)
上記の範囲であっても、全ての機器との互換性を保証しているものではありませんので、相互接続の保証のためには、各設計者における接続性検証、ならびに、量産、もしくは、不特定多数の他社への一般流通製品としての適用においては、互換性検査、および、認証制度の利用などを強く推奨します。また、本モジュールの使用方法を超える範囲のサポートは行っておりません。
6.2 通信可能距離#
通信可能距離は主に送信出力電力、受信感度、および動作環境によって決定されます。本モジュールは標準的な環境条件下(障害物のない見通し線上)において、最大500メートルの通信距離を実現します。
ただし、実際の運用環境では以下の要因により通信距離が短くなる場合があります。
- 建物内の壁や床などの障害物
- 電子機器からの電波干渉
- 金属製の障害物や反射物
実際の屋内環境では、一般的に10〜30メートルの通信距離が期待できますが、建物の構造や材質により大きく変動します。コンクリート壁や金属構造物は信号減衰を引き起こし、通信距離を著しく低下させる可能性があります。
最適な通信距離を確保するためには、以下の点を考慮したネットワーク設計が推奨されます。
- 中継ノード(ルータ)の適切な配置によるメッシュネットワークの構築
- 電波干渉源からの距離確保
- アンテナ(モジュールへの組み込みアンテナの場合は、モジュール)の設置位置の最適化
6.3 電波の出力損失の回避#
電波出力が悪化するパターンをいくつか例示します。これらに該当する場合は、適切な対策を実施することで出力を改善できます。
大地(地面)は電波を吸収・反射するため、地面付近にアンテナを設置することは避け、アンテナを高く上げることを推奨します。また、湖面や海水など、大量の水がある区域でアンテナを水面に近づけて使用すると出力が大きく減衰します。水面から離しての使用を推奨します。
アンテナの近くに金属製の物体がある場合、もしくは、金属製のシェルの中にアンテナが置かれている場合、信号の減衰は非常に深刻になります。金属に比較的強いアンテナも使用できるようになってきていますが、一般に専用の設計を要するため、個別の測定や検証を要します。
本モジュールに供給される電源の安定性が低い場合、電源の出力インピーダンスが高い場合などは、電源設計を見直してください。本モジュールは、送信時に瞬間的に電流を要します。給電ラインの電圧低下や電圧リプルの発生を抑えるように工夫をしてください。
本モジュールとアンテナの整合度が悪い場合や、アンテナ自体の品質に問題があると、通信に影響します。設置状態でのアンテナインピーダンスや本モジュールの取り付け状態などを確認してください。また、アンテナケーブル自体も信号減衰の要因となります。アンテナによって指定されたものや、プリント基板上の配線やコネクタについても信号減衰が少ない実装を行ってください。
6.4 デバイスの接続台数(同時使用台数)#
理論上の接続可能台数
ZigBee®3.0プロトコルの仕様上、1つのネットワークにおいて理論的には最大65,535台のデバイスが接続可能です。これは16ビットのネットワークアドレス空間に基づいています。
本モジュールの最大接続台数
本モジュールのメモリ容量による制限から、本モジュールをコーディネータとした場合に、ネットワークに接続できるルータおよびエンドデバイスの最大接続台数は32台です。
6.5 モジュールの使用環境#
本モジュールの使用環境における注意点を示します。これらは例示であり、個々の設計者により適切な環境下でご使用ください。
給電のための電源を確認して、定格電源電圧内にあることを確認してください。 定格電圧を超えると、本モジュールは恒久的に損傷する可能性があります。
設置および使用中は、必ず静電気防止対策を行ってください。本モジュールは金属シールドを施してありますが、高周波コンポーネントは一般に静電気に敏感です。
設置および使用中は、高湿度を避けてください。内部で使用している高精度のオシレータコンポーネントなど、湿度に敏感なものを含みます。
特別な要件がない場合は、高温または極低温環境下での連続使用は推奨しません。結露や部分的な過度な高温など、本モジュールの動作要件を逸脱する可能性があります。可能な限り、余裕のある動作環境を構築して利用してください。
零下・低温時の動作についても、電波放射が正常に行われることを確認していますが、使用するバッテリーなどは、一般に零下以下の極低温域で安定した出力を得られるものは限定されます。低温使用時において異常が生じた場合、まず電源ラインの安定性の確認を推奨します。
6.6 BER(ビットエラーレート)#
本モジュールは、電気的な影響によってビットエラーが介入、混入する可能性があります。ZigBee®のO-QPSK変調後の無線の送受信においては、BER訂正・補完機能が働きビットエラーの発生確率は極めて低いため、通常の使用においてはそれを考慮する必要はありませんが、本モジュールおよびそれが実装されているプリント基板上で発生するノイズや外部MCUのクロック精度などによって、UART信号にエラーが混入することは希に生じます。ビットエラーやデジタルエラー回避のための参考例は以下のとおりです。
近くに同周波数信号干渉がある場合は、BERが高くなります。干渉源から離れるか、干渉を避けるために周波数とチャンネルを変更してください。
電源能力が不十分な場合、伝送データが文字化けする可能性があります。電源の信頼性を確保してください。
信号や電源の延長ケーブルやフィーダーの品質が不十分または長すぎると、ビットエラー率が高くなる可能性があります。
UART信号線上でのデジタル通信のビットエラーの検証には、チェックサム機能が使用できます。(HEXコマンドモードのみ)
6.7 パケット到達のリアルタイム性#
ZigBee®プロトコルにおけるパケット到達のリアルタイム性は、主に以下の要因によって影響を受けます。
伝送遅延
ZigBee®のデータレートは250kbpsと比較的低速ですが、送信するデータ量が少ないため、数ミリ秒から数十ミリ秒の範囲内でパケットを伝送できます。これにより、センサーデータの収集や機器制御などの用途において一定のリアルタイム性を確保できます。
ネットワークトポロジー
ZigBee®ネットワークは、メッシュ型のトポロジーをサポートしています。メッシュネットワークでは、複数のルートを通じてデータを転送できるため、経路の冗長性が確保されますが、ホップ数が増えるとそれに比例して遅延も増加します。
確認応答(ACK)
ZigBee®プロトコルにおける確認応答(ACK)メカニズムは、パケット到達の信頼性を高める一方で、ネットワーク状態が悪い場合や干渉が多い環境では、再送が複数回発生することがあり、遅延が累積します。ZigBee®では、IEEE 802.15.4のMAC層とZigBee®のネットワーク層の両方でACKをサポートしています。
MAC層ACK:
受信側デバイスは、正常にパケットを受信すると、5〜10ミリ秒以内に自動的にACKフレームを送信します。送信側がACKを受信しない場合、再送を試みます。
ネットワーク層ACK:
エンドツーエンドの確認応答で、中間ノードを経由する場合にも最終的な宛先からの確認を得ることができます。
6.8 他の2.4GHz通信機器との電波干渉#
2.4GHz帯における共存環境
本モジュールが使用するZigBee®通信プロトコルは2.4GHz帯で動作します。この周波数帯は、以下のような様々な無線通信機器も共用しています。
- Wi-Fi®(IEEE 802.11b/g/n/axなど)
- Bluetooth®機器
- 電子レンジ
- ワイヤレスオーディオ機器
電波干渉が発生した場合、以下のような症状が現れる可能性があります。
- 通信の遅延や不安定化
- データ伝送エラーの増加
- 通信距離の著しい低下
- ネットワークの再形成頻度の増加
ZigBee®の干渉回避メカニズム
ZigBee®3.0プロトコルには、干渉回避メカニズムとしてチャンネルアジリティ機能(干渉の少ないチャンネルへの自動切替)が実装されています。
6.9 モジュール制御ロジックの改良の禁止#
本モジュールは、モジュール内部に省電力小型コントローラーを搭載することで、国内電波法、ARIB STD-T66等の規定・規約に従った振る舞いを保証しています。設計者や使用者によってこれらの書き換え、改造などはできません。また、書き換えて使用された場合は、電波法に抵触する可能性があります。当社が提供する書き換え可能なファームウェア以外の使用におけるサポートは提供されませんのでご注意ください。
6.10 RSSI値による送信電力制御#
本モジュールは、受信時における電波受信強度を示すRSSI値を取得する機能が搭載されています。RSSI値を確認することで、おおよその送信デバイスとの電波伝搬特性上の距離などを把握することに使用できます。この値はアンテナ利得などによっても影響を受けますが、同一の2つのデバイス間での電波伝搬特性は対称性をもつといわれているため、返信出力電力を受信時のRSSI値から逆算して低減させて電力の削減や電波使用効率を高めることも可能です。しかしながら、本モジュールのような2.4GHz帯高度化小電力データ通信システムにおいては、実際のモジュールの消費電力のうち送信電力で純粋に消費される電力はその一部であるため、これらの工夫による電力効率の改善については大きな期待はできないといえます。一方で、電波使用効率の最適化については、送信電力が他の通信に与える影響を大きく減らすことに貢献できることから、アプリケーションの目的や設計者の工夫による効果は期待できます。
6.11 技術適合認証・電波法#
本データシートで説明しているZ240-CP13は、工事設計認証(技術適合認証の量産設計認証)を取得しており、本モジュールと認証済みの指定アンテナとともに、そのままの形でモジュール本体の改良をせずに、本データシートに示す公開された手順に従った使用方法を遵守する限りにおいては、設計者が改めて技術適合認証や工事設計認証を取得する必要はありません。本モジュールの仕様は、将来改変される電波法令に抵触することが無い限り、設計者および使用者は認証や免許を取得せずに日本国領土・領海内(移動体搭載を含む)において使用可能です。通信衛星などに搭載される場合で、かつ、電波を発射する場合などに関しては、総務省など電波法制の監督局へお問い合わせください。
設計者によって、独自に設計した送信用アンテナを使用したい場合や、本モジュールを分解した場合、定格外の電源や使用法を行う場合などについては、改めて技術適合認証をその要件で取得する必要があります。通常は、当社ではそのような行為に関してのサポートは提供しておりません。設計者による特段の理由で対応が必要な場合は、当社サポート窓口までご連絡ください。
6.12 日本国外での使用について#
本モジュールは、日本の電波法に基づく工事設計認証を取得しています。本モジュールは2.4GHz帯を使用するZigBee®通信規格に準拠しており、この周波数帯は世界的にISM(Industrial, Scientific and Medical)バンドとして広く認められています。ただし、この認証は日本国内での使用のみを対象としており、国外での使用については、各国・地域の電波法規制に準拠する必要があります。